復興の今から学んだ5つのこと

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今日は少し不思議な気分です。
書いているのは個人の自分と、公益法人助けあいジャパン代表の野田祐機の二つが混ざっています。

7月から助けあいジャパンの代表となって、東北に週の半分は行くようになりました。東北と東京を往復し、色んなことが見えてきました。

東北に縁もゆかりもなく震災後復興に関わった一人の人間として、東北と東京の間の視点で復興の今から学んだことを書きたいと思います。

1.被災地ってどこ? 東北ってどこ?
2.町単位の復興とマルチステークホルダープロセス
3.「みんなで」は全体最適と在り方が見えてくる
4.非営利組織だからできること
5.復興のいま

1.被災地ってどこ? 東北ってどこ?

最初にこの話から書きましょう。
2011年3月11日、14時46分、マグニチュード9.0 日本の観測史上最大の地震が起き、最大遡上高 40.1mにも及ぶ大津波が発生。東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらした。

その後、東京電力第一原発はメルトダウン、水素爆発により重大な原子力事故に発展。原発のある福島県浜通りを中心に、周辺一帯の福島県住民は長期の避難を強いられている。

これが当時起こったことであり、今なお自宅を失った避難生活者は329,777人。
「被災地は大変だ!東北は大変だ!」 そんな思いで日本中が支援の手を差し伸べた。1年7ヶ月が経ち、その支援も少しずつ小さくなっています。被災地では何がいま求められているのか? ぼくはいま、これです! ってはっきり言えない。それは今回の被災地というのが、あまりにも広く、それぞれの場所によって状況があまりにも違うからです。

今回の東日本大震災、被災をしたのは220市町村に及ぶ。それぞれの場所で全く状況が違うのです。 沿岸部と内陸で状況は違うし、岩手、宮城、福島でも全然違う。
「東北に行ったけど、大丈夫だったよ」と言う人は結構多い。東北に行く=新幹線で行っても、被災地の今はわからない。なぜなら、今回被災したのは「沿岸部」であり、新幹線で通る郡山も福島も仙台も盛岡も「内陸」に位置するからです。

内陸から被災地を見にいくには、それぞれの駅から数時間かけて車で沿岸にいかないと見えないのです。ぼくだって、仙台に降りたら全く被災の影響がないように思える。だけど、南三陸町にいくと津波で流された場所がはっきりとわかります。未だに目を疑うほどに被害が広域だったとわかります。

今回の津波の特徴は「町を流した」ということ。津波は家や人を流しただけじゃないんです、町全部が流された地域が多い。それくらい被害が大きいのです。阪神大震災、中越地震は神戸、新潟に被害があった、だから支援もしやすかったんですが、今回は全然違います。

それぞれの場所で被害や課題が全然違う。 これから復興は町単位で進みます。被災地と言っても、もっと小さく、個別でみていく必要があるのです。
広域的災害だったからこそ、複雑なのです。

2.町単位の復興とマルチステークホルダーアプロセス

今回の復興で特徴的な言葉があります。マルチステークホルダーアプローチ、マルチステークホルダープロセス と言われるもので、多様な参加者での物事をすすめるやり方です。

津波で流された町、放射能で帰れなくなった町、被災地にはさまざまな状況の町があります。岩手、宮城、福島と県ごとでの状況も違い、復興計画も違います。県の中でも沿岸部と内陸部で全く状況が違う。復興庁ができたものの、復興計画がそれぞれの場所によって違うのです。違いがあるからこそ国がトップダウンで復興計画を作っても、それが現実の状況とは全く違うものになるのです。だから、各町ごとで復興計画があるのです。

町を作るのは誰なのか?

それは住民であり、そこにいる企業でもあります。そこに行政もあります。 今回の復興では、町、市、県で、物事を決める時に多様な働き手(行政、企業、NPO、市民)が円卓について物事を進めるマルチステークホルダープロセスが採用されています。

津波で流された町で復興をするには、人が中心として復興して行くしかありません。そこにはさまざまな視点が必要になります。行政の視点、企業の視点、市民の視点とそれぞれに違う人たちが協議しながら、町づくりを進めています。

復興とは何年もかかるもの。阪神の時は10年以上かかったそうです。そこに行政だけの視点で決めても、誰も納得しないのです。 町づくり=みんなのもの。 そこにはみんなの視点が必要になってきます。

みんなで町づくりを進めよう! すごくいい話に聞こえませんか?
これ、確かにいい話なんです。 だけど、問題があります。
それは、市民、企業、行政は、それぞれに本来目指しているものが違うのです。

・行政はみんなに平等に、ルールを作ってリスクをなくすこと
・企業は利益を早く出すこと
・市民は自分の生活を守ること、安全であること

この通り、それぞれ元々目指しているものが違うのです。

「みんなで」というのは、それぞれの意見を聞く必要があり、時間がかかります。
「みんなで」というのは、その分いろんな利害調整が必要になります。
「みんなで」というのは、バラバラだからコーディネーターが必要なのです。

行政と企業、そこに市民が入る。それで町づくりや課題の解決を試みるのが今回の復興の特徴です。これまで関わりが薄かったバラバラのものだったからこそ、みんな調整が大変なんです。すごいチャレンジなんですよ。だって、誰もそんなこと恊働で町づくりなんてやったことないんだもん。

「みんなで」っていいことだけど、こう書くとめんどくさくない?
でも、いいこともあるとぼくは思っています。

3.「みんなで」は全体最適と在り方が見えてくる

ここからは私自身が今やっていることで感じたことです。市民、企業、行政とマルチステークホルダーで物事を進めると、対話が必要になってきます。先ほど書いたように、それぞれの参加者の意図や目指すところは本来バラバラなもの。

これまで利益だけ見ていた人が社会のことを考えなければならなかったり、
自分の生活だけ考えていた人が町全体のことを考えなければなりません。

対話を繰り返して相手を理解して行くと、全体としてどうあるべきか? という、全体で最適な答えを考え始めます。これからの町の在り方が見えてきます。 利益だけ、自分の生活だけ、ルールだけ、というその立場だけで考えていたことは社会全体を見た時には実は個別最適されていたものだと気づきます。

私自身もここに気づくまでに時間がかかりました。 全体で良い答えをだすためには、考え方を変える必要があるのです。時にその答えからでたものは、既存の組織では軋轢を生むかもしれないし、他の人からは「訳がわからん!」と言われることかもしれません。「みんなの納得するものにしたら、結局、中途半端になったね。」 そう言われることもあると思う。

だけれども、全体でどうすべきか? という視点でたつと、これまでにないことも必要になります。間に立つ人が必ず必要になります。
今回の復興の場合、その間にたつのが非営利組織だと感じています。

4.非営利組織だからできること

企業は利益やスピードを求める
行政はルールや平等性を求める
市民は自分の生活や安全を求める

これらの中間に位置するのが、非営利組織です。個人が中心だけど、企業のような運営が求められ、公共のために行政とともに仕事をする非営利組織。

困っている人が目の前にいるとき、
企業はお金を生まない限り、価値を提供できません。
行政はみんなの平等性や、全体のルールの中でしか活動ができません。ほんとうに小さな問題に困っているときにルールがじゃまして動けないのです。

非営利組織の場合、サービスを提供してお金を生む訳でもなく、小さな課題にアプローチが可能です。お金を追求しなくてよい、市民の目線で活動できるからこそ、きめの細かいサービスが提供できます。その分、寄付金や助成金の制度もあります。個人や市民団体では責任がとれない、だから法人として登録することが容易にできる仕組みになっています。企業、行政、市民の本当に中心の存在が非営利組織。

今回の復興の現場では、NPOが活躍している例がたくさんあります。ETICというNPOは人材を行政の職場に派遣していたり、町づくりのコーディネーターとして活動しているNPOも、小さなニーズに対応するNPOがたくさんあります。

復興庁もこのNPOと積極的に活動を進めるために、ボランティア連携班という組織が設置されています。 国もNPOや企業と積極的に協働して復興を進める形をとっているのです。先日あった野田首相の所信表明演説にもその部分は触れてあります。具体的な話は岡本全勝さんのサイトを。

ピータードラッカーが非営利組織を強く押していたのも、今ようやく分かるようになってきました。「経済」の時代なら企業だったんです、でも今からは「社会」が中心になってくるのです。これからの社会の真ん中にいるのは、実は市民が中心となっている非営利組織だと感じています。

5.復興のいま

220の被災自治体、30万人もの避難者、風化、ガレキ、放射能と、復興の現場は複雑です。

個別と全体、論理と想い、民と官、生活と経済、利益と公共、被災地と東京。
これらは双方にちがうもの。私は非営利組織の代表として、マルチステークホルダープロセスの中で何度もこの違いに直面します。

いろんなことを考えて最適な答えを探すそうとすると 相手を理解し、違いを理解し、対話をしないといけない。 それはすごく時間がかかることです。
複雑なものをみんなで考えていくには、私は下記の3つのことが必要だといつも思っています。

Communication:  対話、背景や違いを互いに理解しものごとを進めること
Creativity: 複雑なものの中から少し考え方を変えて解決策を見つけていく創造性
Challenge: これまでの個別最適から全体最適を目指すため参加者みんなが枠をこえること

最後のチャレンジが一番大変。
全体最適を目指すと、組織の中での対応や自分自身の枠を超える必要があります。自分一人ではどうにもならないことも本当にたくさんあります。 今、復興の現場で日々活動されている方は、日々自身の生活も不安のなか、このチャレンジをされています。国の予算はまだ決まらない、町づくりは時間も手間もかかる、そんな間に風化は進みます。未だに自宅のない、避難者が30万にもいる今回の大震災。一つ間違うとその人の生活や人生、命の問題につながってきます。

そうは言っても、現地でも東京でもいろんな意見を聞きます。「国はやってないんじゃないの?」とか、「復興で金儲けしてる人もいるんじゃないの?」とかね。
私が知る限り、復興庁の人も、県の人も、市町村の人も、企業も、市民も。だれもサボってる人なんていないし、みんな復興を目指している。でも、被災の辛さから抜けられずに前を向けない人もいらっしゃいます。みんなが前を向いているわけでもない、いろんな想いがあるのです。

ただ、組織や考えの違いからそのアプローチが理解できなかったり、これまでと違ったりするからこそ誤解を生むこともあります。 もちろん、色んなヌケモレや制度の問題はあります。でも、現地に行くと、それが今の精一杯なんです。

町が流された地域は、行政の公務員も津波で流されて人手が足りない。 そんな中、行政の人は復興のために活動されています。自分自身も被災者でありながら、支援者であり続けれなければなりません。上司が亡くなり、いきなり責任者で自分がやらなければならないこともたくさんあります。誰にも聞けない、だけどやらなきゃいけない。苦情の電話もいっぱいくる、行政には課題が山積みです。そんな行政の現場でも助けあいジャパンのメンバーは働いています。

メンバーから話を聞くと、現地の人はどれが正しいかもわからないでみんな悩んでる、課題は山積み、そしていろんなところとの恊働のなかで組織の壁、これからの在り方を見直し、みんなチャレンジされています。それが今の復興の現場。

課題大国日本で最も課題が多い被災地。課題が多いからこそ、上に書いたような新しい取り組みも始まっています。
ここの在り方が今後の日本の在り方に影響するとぼくは思っています。

最後に

まとめをかきましょう。

・311に広域的災害がおき、被災地、東北といえども状況が町によって全然違う。
・マルチステークホルダーアプローチにより、多様な人たちにより復興が進められている
・みんなでやるのは時間がかかる。でも、多様性があるからこそ、在り方が見えてきて、全体にとってよい結果が得られる
・ ステークホルダーの間にたつ、細かいところができるNPOが今回は活躍している
・復興の現場は誰も対応したことがないことだらけ。
・課題先進国で最も課題が多い被災地。 大変。だけど、ここから新しいことも始まっている。

今回はあえてポジティブに書いています。最初に書いた通り、今回の記事は個人と法人の代表の想いの二つが混ざっています。

公益法人というのは、民と官その両方を扱う組織だからなのでしょう。時に官の立場にたち、時に企業の立場にたつ。 東京と東北を往復することで、双方の違いも見えてくる。そんなことばっかり考えているから、最近考えがよくわからなくなります(笑
企業にいたときは利益のことだけ考えていればよかったし、選択と集中でいらないもの、あわないものは切り捨てていればよかった。そんなことが今はできない。

民と官、個人と会社、右脳と左脳、東北と東京、利益と公共、Power & Love。
色んなものの間にいる。これからの社会はどちらかに割り切れるような、そんなにシンプルなものではないのでしょう。

多様な人々が集まり、組織の壁を越えて、新しい社会を創って行く。
今はまだ道の途中。 「みんな」にチャレンジが必要。 現場は大変です。日々挑戦です。

この「みんな」には実はもっと被災地以外の人も含まれていいと思う。東京の人も、地方の人も被災地のためにがちょっとがんばる、枠を超えて関わってみる。そういう仕組みが出来た時、みんなが助けあいながら復興が進むと思っています。

そのプロセスを経て、私は新しい日本が創られていくと信じています。
ちょっと夢みたいな話に聞こえます? でも、いままさにそんな話が組織の枠を超
えて進みつつあるんですよね。(まだ、詳細は秘密だけどねw)

そのお話はまた今度!
ということで、長文読んでいただきありがとうございました。

お知らせ

こちらに書いたような内容を今度チャリティーイベントでも話をします。

ボクと石川さんは現地で学んだこと、会長のさとなおさんと斉藤さんが新しい社会の姿と、インターネットの可能性について話します。

東京と東北の間、民と官の間、利益と公共の間、これまでとこれからの間で私たちが感じていることです。 ぜひ、お越し下さい。

詳細

2012年11月13日 19:00-21:00 (18:00会場)
場所:〒140-0002 東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー

<プログラム>
18時00分:受付開始・サイン本受付
18時30分:ライトニングトーク
19時00分:講演開始 公益社団法人 助けあいジャパン 代表挨拶 野田 祐機
19時15分:公益社団法人 助けあいジャパン 事業報告 副会長  石川 淳哉
19時30分:講演「BEソーシャル」(50分)Looops Communications CEO 斉藤 徹
20時20分:特別対談(40分)助けあいジャパン会長 佐藤 尚之×斉藤 徹
-「復興の今」から見える、新しい社会の姿とインターネットの可能性-

お申し込みはこちらののページより http://peatix.com/event/7509

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