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仲里依紗のCMに見る、方言とコードスイッチング

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2月1日から、仲里依紗が出演しているトヨタPasso (パッソ)のCMが放送されています。このCMを見た瞬間に、「面白い!」と思った点があるので書いていきたい。

  1. 方言で東京を完全に無視したパッソのCM
  2. 方言とコードスイッチング -巧みなコミュニケーション戦略-

 

この2つの点を自動車のマーケットの視点、コミュニケーションの視点で書いていきたい。一番重要な点は「方言」です。

1.東京を完全に無視したパッソのCM

まだ、このCMを見たことのない人のためにまずはこちらの動画を。

 

このCMの面白いところは、長崎県出身の仲里依紗ともう一人のタレントを起用し、長崎のわらべ歌をリズミカルでコミカルな感じで歌っているところです。私自身も長崎県出身なので、懐かしいな~というのが最初の感想だったのですが、ここに自動車業界の情報を付け加えてみると面白い事実が見えてきます。

 

Passoはこれまでに津軽弁、沖縄宮古島の言葉もCMに使っています。 この長崎、青森、沖縄という地方の言葉と軽自動車のマーケットをみると、これが東京を無視したCMだというのがわかります。 下記のグラフを参照ください。

このグラフは各県における自動車保有台数に占める軽自動車の割合です。

黄色、赤になるにつれて、軽自動車が売れている県です。 東京より北、東北は黄色。西の方にいくと黄色と赤の県が目立ちます。 また、わかりやすいように東京、神奈川は軽の割合が低いので青にしています。

分かりやすく書くと東京、神奈川では5台に1台しか軽自動車はありませんが、青森、長崎、沖縄は走っている車の2台に1台が軽自動車というような地域です。当然、パッソが売れるのもこのような地方が多くなります。

パッソは厳密には軽自動車ではありませんが、普通車の中でも軽に近いクラスで、軽のマーケットを対象にした小型の普通車という車です。
ということは、トヨタが狙っているのは東京や神奈川の都市部ではなく、これらの地方をこのCMでは狙っていることがわかります。 しかも、軽の普及率が高い青森、沖縄、そして長崎に届くように、その地域の方言をピンポイントに使っていることが見えてきます。

 

ちょうどこのCMをみたころ、あるネット広告をやっている方とお話させてもらう機会がありました。その方がおっしゃっていたのが、「テレビは地方型メディア、ネットは都市型メディア」という言葉。 確かに東京の友人はあまりテレビを見てないし、車にも興味がない。だけど、地元、長崎の友人はテレビのお笑いの話が多いし、車は足として使ってる。 車が生活に密着しているからこそ。 もちろん、長崎の友人にFacebookやtwitterの話しても、通じません(笑 これは地方出身の方は理解いただけることかと思っています。

 

 

2.方言とコードスイッチング -巧みなコミュニケーション戦略-

もうひとつコミュニケーションの観点から、方言を使ったこのCMの面白さを。

みなさん、コードスイッチングという言葉をご存じでしょうか? これは、2言語を話す人達が使う表現のことです。
例えば2言語使える人がドライブしているところをイメージしてください

Aさん: そうそう、そこのレーンをRight にお願いね。 Turn Right よ。Please slow down ね
Bさん:Ok. Of course, 分かってる、分かってる。その次は go straight ? だよね
Aさん:そう、まっすぐ。 でも、I want to go to コンビニ だから park over there.

みたいな感じで話すことをコードスイッチングと言います。実際、日本語が話せる外国人の人と英語学習者が話すとこのような会話になる場合は多々あります。 このコードスイッチングですが、細かい説明を省くと、あえて違う言葉を使う(スイッチする)ことで人を惹きつけると言われています。

 

ホンダのフリードのCMに、 「This is サイコーニチョードイイ HONDA 」というものがあります。これもコードスイッチングを巧みに使った例です。今回のCMは全て方言です。 テレビという標準語が使われる場所で、あえて方言を使う。この大胆なスイッチングがあるからこそ、あのCMは人に覚えてもらいやすく、親近感を抱きやすいのです

特に方言はウチの言葉と言われるように、非常に親近感を抱きやすい言葉です。 お笑い芸人が なんでやねん!という大阪弁に親近感がわくのは、実は言語学的には理由があるそうです。

このスイッチですが、方言だけでなく、立場や文脈の中で言葉使いを変えることで人を惹きつけます。
その代表例が 小泉元首相。 「感動した!」 「自民党をぶっ壊す」 などと首相の立場ではなかなか言わない言葉をあえて使うことで人々を魅了しました。 首相としての言葉ではなく、私たちがよく使う言葉。このコントラスト(スイッチ)があるからこそ小泉元首相は高い支持率だったそうです。演説の上手い野田首相も、大阪市長に当選した橋本徹市長もコードスイッチをよくする政治家だと言われています。 コードスイッチングは面白いのですが、長くなるので気になる方は下記の本をぜひ

 

 

まとめ

 

今回のトヨタのCMにおいては、マスというテレビを使って、人口が少ない地方をターゲットにした広告になっています。 マスメディアなのに、マスを対象としていない。 先ほどの軽自動車のデータから見ても、地方をターゲットにしているのです。

ここからマスメディアというテレビが、マスであるわけではなく、もう地方向けのメディアになっている気がしてなりません。

もう、マスというマーケットはないと言われていますが、今は都会か地方。マスコミでよくある若者論も、都会の若者、地方の若者でみないと分からないだろうし、そもそも若者という切り口が昔のマスコミの手法な気がします

トヨタはこれまでのマスメディアであるテレビを使って、地方をターゲットに、彼らの方言まで使ってコミュニケーションをしている。さらに、コードスイッチングを巧みに使い、直接感情に訴えかけています。

もうテレビはマスのメディアはなく、テレビは地方のメディアになりつつある。 私はそう感じたからこそこのCMが面白い!と思ったわけです。   

これから広告、メディアがどうかわるのか? 地方型メディアのテレビ、都市型メディアのネット。 そして、方言というこれまでにない切り口。

今年は選挙の年と言われています。小泉前首相、野田首相、橋本市長に代表されるように政治家のコミュニケーションの手法も変わってきています。伝え方一つで政権を左右する可能性もあるのです。
そして今はソーシャルメディアの時代。twitterのつぶやき、facebookのコメントと、我々はより文字を読むようになりました。 そのことからも、人がより言葉そのもので判断するようになってきています。

そんな背景があっての今回の方言。 日本語や言葉の持つ力、伝え方というコミュニケーションのあり方、手法が変わってきた気がしています。

 

方言、自動車のマーケット、広告の変化、コミュニケーションの観点からみた、仲里依紗「でんでらりゅうば」のCM。いかがだったでしょうか?さすがはトヨタさん、そして電通さん。 方言を使うことですごく勉強になるCMです。そして今の時代を表しているCMだと感じています。

 

ご紹介したこちらの本。ことば、コミュニケーションの視点で大変勉強になりますよ。オススメです。

 

 

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  • この記事を書いた人

野田祐機

外資系企業、NPOを経て、2016年に株式会社forsistersを起業。eiffelという手紙サービスをやっています。 28歳からブログを始め、コミュニティーやこれからのトレンド、古典、英語学習などの記事を書いています。 プロフィールはこちらから http://learnbydoing.jp/aboutme/

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